女川の港まではA君の父親に車で連れてってもらい、港からは迎えに来ていた塚浜の家の漁船に乗って塚浜へ向かいました。
旅客用以外の船に乗るのは私は初めてのことで、船が小さく吹きさらしで、エンジン音や波しぶきが直接伝わってくるため、迫力がすさまじくすごいスピードがあるように感じたものです。上下に激しく揺れるのでジェットコースターに乗った気分でもありました。
当時は女川のことなどほとんど知りませんでしたが、およそ五部浦湾に入った辺りで、船の前後左右を船から逃げるように何か飛んでいるものがありました。翼を広げて水面ギリギリを青色か鉛色をした飛行機のような形をしたものがいたのです。鳥のようですが何か違う。何だろうと思っているとA君が「トビウオだっ!」と叫びました。私はこれがトビウオかともう驚きでした。それまでトビウオは図鑑でしか見たことがなく魚が飛ぶなんて信じられなかったのですから。その本物を初めてそれも間近で見たのです。
トビウオはどんどん数を増し、数え切れないほどのものが海面から飛び出して前ビレを大きく広げて滑空していました。船のすぐ傍を飛ぶのもいて船に乗りあがるんじゃないかと思うほどで、これなら虫取り網ででも捕まえられなと思うくらいでした。
私たちはもう嬉しくなってしまって、当時テレビの子供番組か何かで歌われていた「ツッピン、ツッピン、トビウオツッピンピン」という歌詞の歌を塚浜に着くまで歌い続けました。
A君の母親の実家には1泊したのですが、泊まった家がどんな家だったか、食事は何を食べたか、その家でどんな遊びをしたか、海水浴はどんな風だったか、そいうのは今は全く記憶がないのですが、塚浜に行くときの船でのトビウオのことだけはなぜか鮮明に憶えているのです。
聞くところによると、五部浦湾などの女川周辺の海では昔ほどトビウオは見られなくなったといいます。
ツッピンツッピンの歌ですけど、今この歌の記憶がどうも不鮮明で、「…ツッピンピン」のあとが「なんとかかんとかツッピンピン。誰におみやげやろうかなア〜アッホイホイのホイ」と、どうも違う歌がくっついてしまって頭に入ってるんですよね。本当はどんな風な歌でしたっけ。
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